2014年1月13日月曜日

「深夜の電話」 池沢夏樹

二歳の子供は寝相がわるい
ふとんの上を一晩中
あっちへこっちへ動き回っている

午前三時
たまたまその足の裏が
こちらの耳に押し当てられる
受話器のように

もしもし? もしもし?
返事はない

でも小さな足の裏から
ケラケラと笑う子供たちの声と
水を蹴って走る足音が聞こえる
海の風の匂いがする

あちら側は晴れ
群青の空と
純白の積乱雲

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