2014年1月27日月曜日

父親に褒められたこと

高校3年間を自宅から遠く離れた島根県松江市にある高校で過ごした私。卒業式に出席するために父が来てくれた。
3年間の寮生活。それももう終わりだと思うとさみしかったけれど、やっと家に帰ることができると心は弾んでいた。

卒業式が終わって荷物を引き払い、あとは夜行バスに乗って帰るだけ。ほとんどの生徒は卒業式を最後に寮を去って行くのだけれども、就職を控えて自動車学校に通っている生徒は自動車学校を卒業するまでは寮に残って生活することになっていた。

ほとんどの生徒がウキウキしながら寮を去って行く。私も最後の食事を駅前で済ませてから夜行バスに乗り込もうと思っていたら、ある友人は自動車学校に通っているため、まだ自宅には帰れない。寮の玄関で一緒に過ごした仲間を見送っていた。
しかも、ほとんどの生徒は親が卒業式に出席するためにやってきたのに彼女の家は自営業を営んでおり、卒業式が終わっても彼女はまだ寮に残るので、卒業式にも親は出席せずに彼女一人だったと知った。

みんな、親が来てウキウキしながら寮を去って行く姿を見送るのはさみしいだろうと思った私は、一緒に夕食を食べないかと誘い、父を私と彼女と三人で駅前で食事をした。

自宅に戻った父が母にひと言「いい子に育ったな」とぼそっと言ったそうだ。「お父さんってね、なかなか人を褒めないのよ。それを褒めたんだからすごいことね」と母は私にこっそり告げた。多分、彼女を食事に誘ったことを見て、父はそう思ったんだと私は分かった。
口数の少ない父が褒めてくれることは、多分、あとはもうほとんどないだろうと思う。とても嬉しかった瞬間だった。

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