元旦、お餅を焼こうとストーブのある義母の部屋に入って何気なく本棚を見たら
「心に残るとっておきの話」というタイトルの本を見つけました。
この手の本は好きなのです。
お餅を焼きながら目次を見ていて私は「あっ」と声をあげました。
「美味しいよ」。この話はもしかして、と思って夢中でその話を 読みました。
ああ、これだ、この本だ!!
あと数ヶ月で結婚式というとき、
中学校で先生をしていた私はあるクラスに自習の監督として行きました。
生徒がプリントの問題を解いているシーンとしたクラスで、
私は教室の後ろにあった学級文庫 を何気なく見て、
その中の一冊を手に取り、ロッカーに寄りかかって読んでいました。
感動する話が沢山で、いいなぁ、ジーンとするなぁ、と思いながら読んでいました。
そして「美味しいよ」の話になり、
私は自習する生徒の後ろで本を読みながら思わず泣いてしまいました。
(でも泣いたって分かっちゃったら恥ずかしいので必死に涙をふきましたが)
「美味しいよ」の話はこうです。
戦争が終わり、ご主人が抑留されていたシベリアから帰ってきます。
翌日帰る、という連絡を受けて夫人は、駆けずり回って野菜を調達し、
この日のためにと蓄えておいたわずかな米と調味料でささやかな手料理を作り、
ご主人を迎えます。でもどんなに頑張ってもご主人の好きな酒だけは工面できず、
夫人はお銚子に白湯を入れて酌をします。
ご主人を騙しているような気がして顔を伏せた夫人にご主人はごくりと白湯を飲み
「美味しいよ」のひとこと。
はっと顔をあげるとご主人の目から涙が出ていて、
夫人の目からもとめどなく涙があふれ出た、というお話。
ご主人は日本国内の生活物資が欠乏していることを日本に上陸した時に知っていて、杯の湯を口にしたときに、お酒を入手しようと頑張った夫人の気持ちや、
自分は食うや食わずで米や調味料を蓄えておいた思いやりを察したのでしょう、
短い言葉の中には夫人への思いやりと感動の気持ちが込められていた、
というものです。
私はこの話を読んで、なんて素敵な夫婦なんだろう。
お互いがお互いを思いやって、ああ、いいなぁ、こんな夫婦になりたいなぁ、
と思いました。
あれから13年。
不思議な縁でまたこの話が載っている本と再び出 会うことができ、
今、私の手元にあります。
家族も3人増えました。子ども達もやがては大きくなって巣立って行くでしょう。
また二人に戻ったら、こんな夫婦のように優しく寄り添って生きて行けたらいいな、
と思った元旦の出来事でした。
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