以前、上の子がまだ一歳の頃、主人と三人である街に引っ越して
そこで1年間生活していたことがある。
まだ初秋の頃だっただろうか、ひどい大雨が降った日があった。
主人は職場に通うのに駅まで原付バイクで行って3駅分電車に乗るか
私が車で送っていくか、のどちらかだった。
ある大雨の夜、迎えに来て欲しいと主人から電話があり
すぐに帰ってくるから、とぐっすり眠っている子どもを置いて
私は車に乗り込んだ。
バケツをひっくり返したような大雨で、必死でワイパーが動いているのだけれども
雨をぬぐってもぬぐっても運転席の窓には雨がたたきつけられて運転するのも大変だった。
いつも職場まで行くのに使う山と山の間の近道を通っているときのこと
車が途中で動かなくなった。
私は道が冠水しているのに気づかず、突っ込んでしまったのだ。
土地勘があるならきっと、雨ならこの地区は冠水する可能性があるから
ここの道は通ってはいけないと分かっただろうけれど
知らない土地だったので全く考えもしなかったのだ。
私は真っ青になりながらJAFに携帯電話から電話するのだがなかなかつながらない。
近くにあった民家に助けを求めようと走るが、もちろんこんな雨の夜、
家人が外に出てくるわけもない。
どうしようかと途方に暮れていると一台の軽トラックが停まり
「どうしたの?車が動かなくなったんだね。
車はオートマ?ミッション?ギアをニュートラに入れて
後ろから押してあげるから」
とそのおじさんが車を後ろから押してくれてなんとか冠水した道から抜け出せた。
おじさんには何度もお礼を言って頭を下げて
主人を迎えに職場に向かった。
主人は私がなかなか迎えに来ないので心配していたが
冠水した道で車が動かなくなった話をしたら
「それならタクシーで帰ればよかったね」と。
そして家について玄関を開けると、母を探して泣きながら玄関までやってきた上の子ちゃん。
「ちょっとの時間でも一緒に連れて行かなきゃダメじゃないか」と
主人に叱られたのは言うまでもない。
翌日、軽トラのおじさんにお礼を言いたくて
軽トラに書かれていた会社の名前を思い出して電話帳をめくったけれど
私が覚えていた会社名は間違っていたらしく
電話帳に該当する名前の会社はなかった。
その後しばらく、雨が降ると冠水した道路で立ち往生したことが思い出されて怖くなった。
もう15年以上も前の話だから雨の夜の運転が怖いとは思わないけれど
でも冠水した道路は絶対に入ってはいけない、それだけはしっかり覚えている。
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