2015年12月27日日曜日

3・11から4年10ヶ月- 「明日のいわき」のために

 311日は私の誕生日でした。仕事から帰ってきてお昼ご飯を食べ、いつものようにパソコンでメールチェックをして小学校へ子どもを迎えに行く。
 いつもと同じ日常がこれからもずっと続いていくと思っていた私。玄関のドアを閉め、私は出かけていきました。でも再び家に戻ってきた時にはもう同じ日常はそこにはありませんでした。

 (東電の)水素爆発の様子をテレビで見た私は不安で押しつぶされそうになりました。その前の年に子ども達と訪ねた岡山と広島でのことを思い出し「ここで命のリレーが止まってしまうのではないか」と、主人の実家がある埼玉へ行こうと主人に涙ながらに訴えました。
 主人は東京育ちで実家は現在、埼玉にありますが主人の両親は岡山出身です。倉敷に主人の父方の実家があり、義母も倉敷で育ちました。
 しかし義母の両親はもともと広島出身で、仕事の関係で倉敷に住んでいましたが父親が定年退職した後はまた広島に戻る予定だったそうです。
 だから義母の両親のお墓は広島にあります。主人はつねづね子ども達に「ご先祖様の誰か一人でもいなければ私達はこの世には生まれることはできなかったんだよ。」と言っていました。私は子ども達を岡山と広島に連れて行きご先祖様へお墓参りをすることで、目には見えないけれど遠い過去より沢山の命がバトンをつないで現在の自分につながり、未来へもこの命のバトンを通してずっとつながっていくということを子ども達に感じて欲しいと思っていました。

 
 そして起きた原発事故。
「もしかしたら命のリレーもここで途切れてしまうのかもしれない」という思いが頭をよぎりました。「いや、なんとしても命のリレーをつなげていきたい、主人が行かないのなら私が一人で車を運転して埼玉まで子どもを連れて行こう」と思っていた矢先、主人の会社もやっと自宅待機になり、それまで通行止めだった高速道路も利用できると知りました。
 ガソリンが十分でないことから埼玉行きを心配していた主人も「高速道路が使えるのならなんとか埼玉まで行けるかもしれない」と決心してくれました。
 
 私は9人兄妹です。私達が埼玉に行こうと思ったときには、結婚していて嫁ぎ先の親類を頼っていわきを後にした妹家族もいましたが、私の両親や未婚の兄妹、結婚していても遠くに親類がいない妹家族はいわきに残っていました。
 でもきっと義母なら両親や兄妹も受け入れてくれる、そう思って義母に相談したところ快諾してくれたので車3台、総勢16人で埼玉を目指しました。
 埼玉では主人の実家と、実家近くにあった義兄の家に身を寄せました。義母の両親はもともと広島出身でしたが、倉敷に移り住んでいたため義母の家族は広島の原子爆弾の被害は免れました。
 ですが親類縁者は大勢亡くなり、義母もお世話になった方がひどい後遺症に悩まされているのを間近で見ていたので、原発事故がどんなに大変かよく分かっていました。
 だから困っている私達を喜んで受け入れてくれました。また義母の友人知人達は「山田さんの息子さんが困っている」と水や食べ物を沢山届けてくれたり送ってくれたりしました。それがどんなにありがたかったことか。
 義母、義兄と義母の友人達のおかげで私達は何不自由なく嫌な思いもすることなく避難生活を過ごすことができました。
 いわきに戻る日、私の両親が義母に挨拶にきたときに私の母が流した涙を私は忘れることはできません。
原発の事故のことでは沢山の方に心配していただき、とても親切にしていただきました。その方々に今の私がお返しできることは何だろうと考え、私は周囲の人達の協力を得て『震災から学んだ14のこと』というレポートを書きました。
 自分の失敗談や、こうしておけばよかった、あれがあったらよかった、ということなどをまとめました。どうか私のような失敗をしないで欲しいという思いを込めて書き、お世話になった方へこのレポートにお礼状を添えて送らせていただきました。
震災が起きて大変でしたが、震災がなければ出会うこともなかった人ともつながることができました。また、震災がきっかけで新しいことも始まりました。震災前、アリオスでかえっこバザールを開催していた「アリオス・プランツ!こどもプロジェクト」のメンバーが震災後、自分たちにできることをしようと「あそび工房」を立ち上げました。


月に1度アリオスのキッズルームやカンティーネなどの共有スペースを使って、子どもも大人も一緒に遊ぶ会です。20118月に第1回目が行われ、今年12月で52回目を迎えました。
スタートした当時、放射能の影響で子ども達は外で遊べませんでした。屋内で子ども達が遊べる遊び場として「あそび工房」はとても喜ばれました。
現在は子ども店長が活躍しており、子ども達の日々進化するアイディアに毎回感心しています。
あそび工房を宣伝するチラシがあったらいいね、と『キッズ★アリペ』も生まれました。キッズ・アリオスペーパーの略で市内の子育てイベント情報や、子育てに関するお知らせを掲載しています。
あそび工房やキッズ★アリペはアリオスとの協働作業ですが私個人でも「いわきこどもプロジェクト」というブログFacebookページを作り、震災後いわきに引っ越してこられた方や新しくママになった方にいわきでの子育てが楽しいと思ってもらえるように情報発信をしています。
 今後もいわきで子育てをしているママ達を応援していきたいと思っています。

月刊り~ど2016年1月号寄稿

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