義母が東京に出てきて驚いたのはうどんのつゆの色。飲食店でうどんを注文したら黒いつゆにうどんが入っていて、コーヒーの中にうどんが浮いているのかと思ったそうです。その話を義母から聞いたとき、私は中学生の頃に父と名古屋に行ったことを思い出しました。駅前で食べた初めてのきしめん。つゆが透き通っていたので薄味の味付けを想像して口に入れると意外に味がしっかりついていて、それが私好みの味だったのでひとくちできしめんが好きになりました。
義母とはよくお茶を飲みながら美味しいものをいただき、いろんな話をしました。そして私が普通だと思っていたものが、実はそうではないことが他にもあると知りました。桜餅もそのひとつです。
桜餅といえば私は水で溶いた小麦粉の生地を薄く焼いてあんを巻いたものを想像します。ですが義母にとって桜餅といえば、あんを蒸した道明寺粉で包んだもの。私が道明寺と呼んでいるものが義母にとっての桜餅だったのです。私が桜餅だと思っていたものには長命寺という名前がありました。ちなみに私は断然、道明寺派。もち米でできたつぶつぶの部分が好きです。
それでは西日本では道明寺が桜餅と呼ばれているのかと言われれば一概にそうともいえないのです。私は高校3年間を島根県松江市で過ごしました。友達と街に買い物に行ったときに老舗の和菓子店の店先に「桜餅あります」という言葉を見つけて購入したことがありました。でもそこで販売されていた桜餅は道明寺ではなく長命寺でした。
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