2019年8月1日木曜日

饅頭と岡山 みんゆう随想24

 埼玉にある主人の実家に帰省して泊まりに行くと、義母は生前、主人が小さかった頃の話だけでなく、義母自身の話もよくしてくれました。私はいつも頭の中で義母の故郷である岡山県倉敷市の風景を想像しながら話を聞いていました。そんな中、実際に行って見てみたいという思いが強くなり、5年前の夏、家族で倉敷に行きました。
 義母のすぐ上の兄が倉敷にあった義母の実家の近くに住んでいるので、義母が育った街を案内してくれました。昔と比べれば開発が進み、田んぼだった場所に新しい家が建つようになったそうですが、昔ながらの家屋が建ち並び、車のすれ違いができないような細い道や街の中を流れる川が印象的でした。義母が通っていた母校は新しくなっていましたが、両親に連れられて通っていたキリスト教会は当時のままだそうです。
 途中で立ち寄った藤戸寺(ふじとじ)には能の謡曲「藤戸」にもなっている伝説があります。その昔、この辺りは浅瀬で、源平合戦の際に佐々木盛綱が若い漁師に道案内をさせて戦いに勝利しましたが漁師を口封じのために殺害しました。漁師の母親は「佐々木憎けりゃ笹まで憎い」と山の笹を抜き、その山に笹が生えることはなく“笹無山”と呼ばれるようになりました。佐々木盛綱が漁師や合戦で命を落とした人を弔うために建てたのが藤戸寺だそうです。
 藤戸寺のすぐ近くにあるのが「藤戸饅頭」のお店。映画「ALWAYS三丁目の夕日」は岡山でもロケをしたそうで、義母は映画を観て懐かしい場所がいくつも出てきたと言っていました。映画に登場した和菓子店がまさにこのお饅頭屋さんです。義母が小さかった頃、ここでできたての温かいお饅頭をよく買ったものだと、伯父の家でそのお饅頭をご馳走になり、お土産にもいただきました。
 この「藤戸饅頭」、ひとくちサイズに丸めたこしあんを白いごく薄い皮で包んで蒸し上げた酒饅頭で、こしあんが大好きな私はほとんどあんこでできているこの「藤戸饅頭」の大ファンになりました。日本三大饅頭である岡山の「大手饅頭」は「藤戸饅頭」とそっくりです。
 岡山のお土産といえばきびだんごが有名ですが、岡山方面にお出かけの際はぜひ「藤戸饅頭」や「大手饅頭」を召し上がってくださいね。

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