2015年3月24日火曜日

さくら ひらひら とんぴんぴん たっちコラムno.55

2015年3月号のこどもたっちのコラムです。

 私が小さい頃、大好きだった児童書「はなはなみんみ物語」。その著者であるわたりむつこさんの、三春の滝桜をモデルに書いた絵本が発売されると聞いて本屋さんへ行きました。わたりさんは宮城県白石市で生まれ、小学校から高校までを原町で過ごしました。震災でわたりさんの生家は取り壊され、子どもの頃過ごした相馬地方の海岸の様子も一変しました。ふるさとの原風景を失って喪失感に襲われたときにわたりさんが思い出したのは、震災が起こる前の年にこの絵本の挿絵を担当したましまさんと訪れた三春の滝桜。滝桜は天から滝が流れ落ちるような生命力に溢れていました。そして再び三春を訪れ、震災後も大地に根を張り新しい蕾をつける桜を見て「桜の絵本を書きたい」と思ったそうです。挿絵のましまさんは「桜を描くのは難しい」と里山の風景を求めて甲府へ何度も足を運ばれたそうですが、絵本の中に描かれている桜は本当に見事で美しい。作者のことばの中でわたりさんは、ましまさんのところに生まれた初孫“花ちゃん”にふれ「新しい命はきっと消えたふるさとを甦らせてくれるだろう、いまはそう信じている。」と結んでいます。子どもだけでなくいろんな世代の方に読んでいただきたい古里ふくしまの絵本です。

こどものとも年中向き 20153月号
 わたりむつこ さく ましませつこ え 
福音館書店

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