2024年11月23日土曜日

「希望について私は書きしるす」 谷川俊太郎

希望は全身で笑っているひとりの子どもにある

その子の上の青空にある

だがもっと強い希望はもう泣く力もなく

ぼんやりと座っているひとりの餓えた子どもにある

その子の下の大地にある

そうしてもっとも強い希望は

死んでしまったすべての子どもにある

その子らの姿を思い描くひとつの無名の心にある


風よ

どこの国のものでもない風よ

なんの主張もせぬ旗を

ひるがえせ春の野に

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