2017年1月12日木曜日

絵本美術館の思い出と数年ぶりに絵本美術館に行ったときのこと ①

アリオスペーパーの取材で“絵本美術館”に行くことになりました。震災前、何度か足を運びましたが震災後には行く機会がなく数年ぶりに訪ねることになり、初めて絵本美術館に行ったときのことがいろいろと思い出されました。
 そして絵本美術館に久しぶりに足を運ぶまでのお話です。


初めて絵本美術館に行ったのは11年前の2005年。私に「絵本の読み聞かせ」の楽しさを教えてくれたママ友が「絵本美術館の招待状があるんだけど一緒に行かない?」と誘ってくれたのでした。初の絵本美術館にはもうすぐ2歳になるという息子を連れて行きました。


 ちょうど12月だったので入り口を入ったところからすでにクリスマスの装飾が施されていました。
毎年テーマによってクリスマスツリーも変わるそうですが)その年は“くるみ割り人形”のツリーが私たちを迎えてくれました。なんてステキなところなんだろう、とワクワクしたのを今でも覚えています。


中に入るとコンクリートの打ちっ放しの、シンプルな建物の壁一面が書架になっていました。高い天井の上までびっしりと絵本が、それも表紙が見えるように並べられていました。絵本の表紙の色は様々なので、カラフルなモザイク画のようでうっとりしました。


絵本美術館は海に面した高台にあるのですが、海に面した部分はガラス張りになっています。海を見たくて建物の奥に行こうと階段を降りるのですが、交錯する細い通路に入るとまるで迷路のようで行き止まりになっていたりして、なかなか行きたいところに行けません。


でも、窓から差し込む優しい自然光が、同じところを何度もグルグルと回って目的地につけなくても「ま、いいか」という気持ちにさせてくれました。


息子はロフトのような天井近くのフロアがお気に入りでした。キノコのような形のクッションがあったりしてクッションの間をピョンピョン飛び跳ねて喜んでいた記憶があります。


またステキな椅子や、場所によってそれぞれにデザインの異なったテーブルと椅子のセットが置かれており(どれもさりげなくセンスの光るものばかり)、訪れた人は思い思いの場所で好きな絵本を読むことができるようになっていました。






一冊一冊並べられた絵本の横を通りながら「これを並べるの、すごく大変だっただろうな」天井近くに並べられている絵本を見上げては「地震が来たら大変だろうな」と思ったのを覚えています。まさかあの時は、本当に大きな地震が来るなどとは夢にも思っていなかったのですから。


実は震災後、あの高くびっしりと並べられていた絵本たちはどうなっただろうか?と何度か気になっていました。
実際、絵本美術館の近くに住んでいた知人は津波の被害を受けて県外に引っ越しました。いつも絵本美術館に行くと幼かった息子と二人で絵本美術館の向かいにあるホテルでランチを食べるのが楽しみでした。高台にあったホテルの上の階のレストランからは、太平洋がよく見えました。遠い水平線をゆっくりと船が動いていく様子も見えました。そして絵本美術館の下の、海にほど近いところに沢山の民家があるのも見えました。ゆったりと窓の外の景色を眺めながら「いいところだねぇ」といいながら美味しいランチをいただくのが絵本美術館に行ったときのお決まりのコースでした。


絵本美術館の園長先生のインタビュー記事の話が舞い込んできた時、「あんな大きな地震があったけれど絵本美術館は大丈夫だったのだろうか?」と気になっていたので行ってみたい気持ちはありました。でも、絵本美術館のすぐ下の、海のそばにあった民家を思い出して、津波の被害があったであろう場所に行くのはいろいろなことを考えてしまうから少し怖い気持ちもありました。

絵本美術館を最後に訪れたのは78年前。その時の記憶を頼りに、途中、道を間違えながらもやってくると絵本美術館は震災前と変わらない姿でそこにあり、ほっとしました。


絵本美術館の中に入っても前と全く変わった様子もありませんでした。近くにいた先生に聞いたところ、やはり絵本は落ちたそうですがそれ以外の被害はなかったそうです。
そして絵本美術館の大きな窓に行き、おそるおそる海の方を見てみると、海岸線には新しい堤防ができており、前に向かって進んでいっている姿が感じられて安堵しました。


絵本美術館で私が忘れられないポイントはトイレです。幼かった息子をトイレに連れて行ったときのこと。“おしっこぼうや”の絵本が男子トイレの壁に透明なケースに入れられて展示されていて、その演出がとても粋だと思いました。それはまだあるのかな?と気になってトイレをのぞいてみたら、やっぱり“しょんべん小僧”ならぬ“おしっこぼうや”があったので嬉しくなりました。


絵本美術館は古い絵本、世界の絵本、日本の絵本、猫の絵本、犬の絵本、などに分かれて並べられています。以前、小学校で読み聞かせを一緒にしていた仲間と訪れたときに読んで思わず涙がこぼれた「牛女」(母親が子どもを思う日本の昔話)もちゃんとありました。


それから「まどのそとのそのまたむこう」という名前の、タイトルを絵本美術館の名前にいただいたという絵本も中央のよく見えるところにありました。


園長先生のインタビューは後日電話で行う予定だったので、この日は絵本美術館を創設した前園長先生(故人)のお写真や資料をいただいて帰路につきました。

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