「ガスタンクを見て、あんな大きいコーヒーカップがあったらどうだろうと、ふと思った。高いはしごでよじ登り、底にすこしたまっているコーヒーを、はいつくばってなめる自分を思いうかべて、目がくらむ思いがした。
電柱ほどもある鉛筆、山ほど高いすべり台、体がすっぽり入ってしまいそうなくつ、と数えあげれば、きりがないほど楽しい。
では、かさのように大きなチューリップができるだろうか。エジプトの王は、ピラミッドという巨大な墓をつくらせたが、大きな花を咲かせることだけはできなかった。
生命を人間がつくることはできない。花一つ、虫一つがかけがえのないものであることを思わねばならぬ。」
(安野光雅「おおきなもののすきなおうさま」あとがき より抜粋)
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