アリオスで発行しているCINEMA PRESS のvol.3で
今まで観た映画で印象に残っているものについて書いたことがあった。
私は20年くらい前に観た「ピアノレッスン」という映画を選んだ。
音楽も気に入ったのでピアノのサントラCDも買ったほど。
海を渡り、私生児の娘とピアノとともに嫁いでくるエイダ。彼女は娘とピアノにしか心を開かない。しかしピアノを取り上げられてしまい、彼女は夫とは正反対の、野生人のような男ベインズの元に通いピアノレッスンをする。最初は嫌々ながらもピアノを早く返して欲しくてレッスンをするのだが、ベインズのストレートな愛情表現にやがては彼の愛を受け入れてゆく。しかし夫もまたエイダを愛していた。
あんなに熱烈に求愛されたら女性の気持ちは揺れ、傾くだろう。「そのうち僕を好きになるさ」という夫が自分の気持ちを妻に伝えていたら状況は変わったかもしれない。男性諸君、好きだったら好きとストレートに伝えることを私はオススメする。
字数の制限があったので書いたのはここまでだったけれど、話のラストの方に出てくる
エイダがベインズと新しい地へと旅立つ時、カヌーに一緒に乗せていたピアノを海に落とすシーン。
あのシーンもまた印象深い。
ピアノに絡みついていたロープがエイダをも海へ引きずり込み、ピアノと一緒に海に落ちていく。
ここで話は終わるのかと思っていたら、絡まっていたロープをはずして海面に浮かび上がってくるエイダ。
そしてピアノは海底に向かって落ちていく。
そのシーンを境に、今までの心を閉ざして娘以外とは決して口をきこうとしなかった暗い女のエイダから
新天地に渡ったエイダは明るく談笑し
前夫が愛の為に切り落とした指の代わりにベインズから贈られた義指を使ってピアノレッスンをする。
ああ、エイダは一度死んだのだな、と思った。
あのピアノと一緒に古いエイダは死んで、新しいエイダが生まれた。
多分、あそこであのままピアノと一緒に海の底に行ってしまうという選択もできたけれど
彼女は「生きる」という選択をした。
ベインズとの愛情はあんなに硬く、冷たい氷のような心を溶かしたのだと思った。
今まで不遇のように見えたエイダの人生も、本物の愛に出会ってやっと幸せになれたんだと
そう思った。
映画「ピアノレッスン」の詳しいあらすじはこちらにあります。
http://eiga-kaisetu-hyouron.seesaa.net/article/136881888.html
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